but you

由紀とは駅で別れた。
駅の中も湿気を帯びた生ぬるい空気が漂っていたけど、外は酷い。もう太陽は沈みかけていたのにアスファルトから熱がでているようだ。

私はバスに乗って、いつもの停留所より一つ先の停留所で降りる。
【あとでおれんちきて】
とメールが入っていたから。
漢字くらい使えよ。

ピンポンを鳴らすと、陽平のお母さんが出てきた。私は密かに陽平はお母さん似だと思っている。

「あら、亜子ちゃん」
「こんばんは。夜にすみません、お邪魔します」
「どうぞどうぞ」

家の中はひんやりとしていた。

多田家の人とは一通り会った。三年も付き合ってれば会わないほうがおかしいけど。

玄関の左手にある階段を上がって、一番奥にあるのが陽平の部屋だ。この家の勝手もだいたい理解した。ノックもしないで入る。

思った通り。
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