but you
「亜子、帰ろ」

ここのとこ、よく来るなあ。

「ごめん、今日ちょっと野暮用」
「っそ。わかった」

ほんと冷めてるなあ。この人はなんで私と付き合ってるんだろう。陽平は私のことをどう思ってるんだろう。謎だ。

「じゃあね」

いつもと変わらない顔で、仕草で、陽平は背を向けた。昨日のゲームに負けた時のほうが落ち込んでた。なんなんだ。
特に何をするでもなく、ぽーっと陽平の後ろ姿を見送ってると、

「陽平ー」

陽平のクラスの女の子が陽平に声を掛けていた。岸さんだったっけな。腕なんか掴んじゃったりして、上目遣いなんてしちゃったりして。陽平は私に接する時と変わらない。
私の視線に気付いた岸さんは、慌てる様子もなく、にっこりと笑ってきた。
なんだよ。
気持ち悪い。
無性に腹が立って、教室の中に入る。

「あれ、今日一緒に帰らないんだ?」
「うん。野暮用ってやつ」

いらいらする。鞄の中に放り込む仕草も荒々しくなる。陽平にも、岸さんにも。なんでこんなに腹が立つんだろう。――これじゃ私ばっかり……

「」
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