口説いてんの?

「すいませんでした」

凪斗が、事務所のドアを開けながら言った。

「私、悪い事言ったかなぁ?」

薫子が目を向けるとあの眼鏡を掛けていた。

「え?」

「薫さんじゃないですよ。

 コンタクトが・・・まだ慣れなくて

 長時間つけてると充血するんです」

「あぁ、そうなんだぁ。

 でも、全然違うよね。真面目に見える」

「それが嫌だし

 母親にも怖く見えるって言われたんで」

「そうかぁ。綺麗な顔してるから

 コンタクトの方が良いと思うけど。

 まぁ、無理しなくてもいいんじゃないの?」

「はい」

「私が泣かせたのかと思ってビビったよ!」

「すいません。

 男ですからそう簡単に泣きませんよ。

 でも、眼鏡を掛けたら

 少し緊張が和らぎました」

「良かった。じゃあ、仕事しよう!」

二人は揃って事務所を後にした。


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