口説いてんの?
薫子は、長い息を吐き出して表情を繕った。
「私が年上だから
キスくらいなんでもないと思って?」
「いえ・・・それは・・・」
彼が口篭ったので
薫子も身体を起こし軽くキスをした。
「ね、出来たでしょ?
安心して、俊也達には言わないし
こんな事で友達関係は壊れないから!」
「違います・・・そうじゃなくて・・・」
「大丈夫だから、気にしないで。
朝御飯持ってくるから」
薫子は優しく微笑みかけ、部屋を出た。
冷たい水で顔を洗おうと洗面所へ向い
鏡を覗いた。
其処に映ったのは、今にも泣きそうで
それを一生懸命我慢している女だった。
胸のどこかが酷く痛んだ気がして
暫く放心状態になってしまった。