口説いてんの?
凪斗の身体を振り解こうとしても
男の力には勝てないので
薫子は懇願していた。
「ちょ、ちょっと・・・待って・・・
お願いだから・・・凪斗・・・」
「どうしてですか?」
彼の乱れた息遣いが恐怖に変わり
顔を覆って叫んでしまった。
「嫌ー!!!」
「薫さん?!」
彼の声に困惑が滲み出ていた。
薫子は乱れた服を直し
座り込んで動くことも出来なかった。
不穏な沈黙があり
何か言い訳を考えようとしたけど
何を言っても嘘っぽい気がして
結局、何も言えなかった。
「俺、帰ります」
「ごめん・・・」
もう少し待って、と心の中で呟いた。