口説いてんの?

後ろから車が来ていなかったので

大事には至らなかった。

薫子は、伸ばした手を素早く引っ込めると

凪斗が声を出して笑った。

「ごめん、ビックリして・・・大丈夫?」

「なんで俺が守られてるんですかぁ?

 薫さんって、本当良い人ですよねぇ?

 俺、そういう所が好きだったんですよ」

「だった?過去形かぁ」

薫子の呟きは

彼の笑い声に掻き消されてしまった。

もう終わってるのかもね。

気持ちをぶつけるだけ迷惑になる。

また、友達に戻れるだけで良いかなぁ。

でも、壊れるほど・・・何もしてないかぁ。

「行きますかぁ?」

彼は、こっちを向いて優しく笑ってくれた。

久しぶりに目を合わせ、笑顔を見た。

期待しても良いのか?

それとも吹っ切れた笑顔なのか?

薫子の心は煩く騒ぎ始めていた。


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