口説いてんの?
薫子は首を横に振り、声を張った。
「ううん!そうじゃなくて・・・
言いたいのっ!訊いて欲しいのっ!
凪斗にちゃんと伝えたいのっ!」
「あぁ、はい」
とは言ったけど、やはり決心が付かない。
薫子は顔が見えないベッドへ移動して
膝の上で指を組んだ。
「たぶんビックリすると思うから
心構えだけはしといてね?」
「はい」
彼の声が遠くで聞こえる。
薫子は咳払いを一つした。
「私は凪斗が好きです。凄く好きです。
あの時凪斗を拒んでしまったのは
心の準備が出来てなかったからで・・・
実は・・・私・・・
男の人を知らないんです。まだ、処・・・」
その時、グラスが倒れる音と
彼の小さな悲鳴が聞こえた。