口説いてんの?

薫子は慌てて駆け寄り、声をかけた。

「ごめん、ビックリだよね?

 タオル持ってくるよ」

彼はティッシュでテーブルを拭きながら

声を落として言った。

「本当ですか?」

薫子はドアの前で立ち止まり

小さく息を付いた。

「うん、だから怖くなった。アハハ!

 笑っちゃうでしょ?23歳にもなってさぁ。

 迷惑だよね?こんな事・・・」

薫子はわざと明るい声を出し

ドアノブに手を掛けた。

「待って下さい」

彼は立ち上がり、薫子の後ろに歩み寄った。

「あぁ、ごめん・・・あの・・・」

薫子は落ち着かず

自分の身体を抱きしめるようにした。

「俺が抱きしめても良いですか?」

彼は凄く落ち着いた口調で言った。


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