口説いてんの?

薫子は、身体に雷が落ちたような感覚に

陥り、直立不動になってしまった。

息をするのも忘れていたので

胸が苦しくなり、座り込んでしまった。

「薫さん、大丈夫ですか?」

凪斗が肩に腕を回し、優しく問い掛けた。

其処へ猫も歩み寄り心配そうに鳴いた。

猫の頭を撫でていると

呼吸は落ち着いてきたけど

思考はストップしたままだった。

「ありがとう。何の話してたっけ?」

「俺、薫さんを見ないように

 薫さんの声を訊かないように

 してたんですよ。

 そうすれば忘れられると思って・・・」

「へ?」

「へ?って・・・ハハハ!

 俺が言ってる事理解出来てます?」

「私を避けてた?」

「そうです。避けてました。

 嫌われてると思ってましたから・・・」

彼が薫子を抱きしめた。


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