口説いてんの?

「なんで避けてたのに抱きしめるの?」

「好きだからです」

「へ?誰が?」

彼は、薫子の肩を掴んで身体を

自分の方に向けた。

「俺です」

彼は、薫子の両頬を掌で包み

顔を近づけてキスをした。

小鳥がくちばしで突くようなキスを

何度も繰り返した。

薫子は正気に戻り、彼に尋ねた。

「なんで?」

「好きだからです」

「嘘?」

「嘘の方が良いですか?」

「ううん」

薫子は、溢れる涙を止めることが

出来なかった。

それを、彼が柔らかい舌ですくってくれた。


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