口説いてんの?
抱きしめられると、胸に開いた穴を
彼の鼓動が塞いでくれてる気がした。
暖かくてドキドキした。
「でも・・・良いの?」
「何がですか?」
「私、処女だよ?」
「それが?」
「凪斗の欲望を受け止めてあげれない」
彼は肩を落とし、深く溜息を付いた。
薫子は、漠然とした不安にかられて
処女は面倒くさいし、重たい、と
誰かが言った言葉を思い出した。
凪斗も重荷に感じているのかもしれない。
好きだけでは乗り越えられないような
高い壁を見上げているのかもしれない。
薫子は、誰よりも彼の気持ちを
優先したいと思った。
無邪気さを装って、彼の顔を覗き込んだ。
彼の目に輝きはなく
その瞳は、不安と苦痛で揺れている。