口説いてんの?

相手の名前を訊かれたらどうしよう?

凪斗って言ったら俊也はどうするのだろう?

ううん、口が裂けても言えない。

バイトの子が帰ると、俊也はうな垂れて

ウー!と唸り声を出した。

薫子は、作業台の反対側へ駆け寄り

俊也の前に膝間づいた。

「ダチだって言ってたじゃん!

 ダチとして抱きしめてくれたんでしょ?

 だから、私もダチとして見てた。

 今だから言うけど、俊也なら、って

 思ったこともあったよ!

 でも、俊也もそれ以上

 踏み込んでくれなかったでしょ?

 強引にでも抱きしめて、キスしてくれてたら

 私は俊也の胸に飛び込ん・・・」

薫子は言葉を切って、俊也から目を背けた。

本当にそうだろうか?

凪斗に惹かれることもなかったんだろうか?


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