口説いてんの?
「女はいいよなぁ・・・泣けるから」
俊也は鼻を啜り、低い声で呟いた。
「もう、泣いてんじゃん!」
「泣いてねーよ!」
「俊也・・・ごめん。
でも、大好きなのは変わってないから。
私もダチとして抱きしめてもいい?」
俊也は、薫子の肩に額を押し付けた。
二回嗚咽を漏らし、乱れた息と
昂ぶった心を鎮めて、俊也は顔を上げた。
目の周りが少し赤くなっている。
友達と恋人を天秤にかけ、思考に沈み
不安感を募らせいたのだろうか・・・
どこか安堵したようにもみえる。
「幸せか?」
「うん」
「薫子が幸せなら、それで良い」
「うん」
俊也は薫子の頭を撫でて
穏やかな顔で笑った。