口説いてんの?

凪斗と一緒に店を後にした。

ついでだから凪斗を送って帰る、と

俊也に嘘をついた。

二人で並んで駐車場まで歩きながら

薫子は俊也のことを考えていた。

自分だって・・・酷い顔してたよ。

溜息ばっかり吐いて、何回パッド落とした?

事務所から出て来ないと思ったら

灰皿が山になってたし

名前を呼ばれても気付かないので

バイトの子に笑われて。

薫子は、無意識に口に出していた。

「なんにも悪い事してないのに

 俊也に嘘ばっかり・・・」

「何か言いました?」

薫子は、虚を付かれて凪斗を見上げた。

彼が隣に居ることを忘れるほど

頭の中は俊也でいっぱいだった。

「私、今どんな顔してる?」

「ん・・・」


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