口説いてんの?
玄関を入ると
リビングから母親の大きな声がした。
「彼も一緒でしょ?」
「うん」
「ケーキ切るからこっち座って!」
「なんで?部屋で食べるよ」
「良いから、夕飯も食べなさい」
薫子がリビングのドアを開くと
父親がソファに座っていた。
「お父さんも居るみたいたけど」
薫子が凪斗に視線を移すと
彼は顔色を失くしていた。
「・・・」
「ケーキ持って上がるから部屋行ってて」
「・・・」
「凪斗?」
薫子が彼の腕を掴むと
ようやく口を開いた。
「大丈夫です。一緒に行きましょう」
彼が薫子の背中を押した。