口説いてんの?

薫子は、彼と目線を合わせないように

斜めに視線を流した。

「それも嘘です」

「嘘じゃない」

「分かりました、それでも良いです。

 でも、薫さんがしたくなくても

 俺はしたいですから」

「嫌だ」

薫子は唇を尖らせ、視線を合わせなかった。

「緊張が和らぎましたね?」

薫子は顔を上げ、凪斗の目を見た。

「貰って下さいって言ってくれた時

 ガチガチに固まってたから・・・」

「顔から火が出るかと思った・・・

 なのに・・・いらないみたいな事・・・」

「いらない、とは言ってませんよ。

 ただ、リラックスして欲しかったんです」

「え?」

「まぁ、俺もガチガチですけど・・・」

彼は、優しさと真剣さが浮かぶ瞳を見せて

唇を寄せ、キスをした。


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