口説いてんの?

薫子は部屋に戻り、俊也に電話を掛けて

凪斗には言わないように、と伝えた。

留美の気持ちも話すと

二人で協力してやろう、と言ったので

薫子も、そのつもりだ、と答えた。

翌日、凪斗は休みだったので

昼前に帰ったらしい。

やはり何も覚えてなかったらしく

留美と買い物でも行けよ、と

さりげなく伝えたということだった。


     ☆     ☆     ☆


数日後、留美が嬉しそうな顔で傍にきた。

凪斗と買い物へ行き、映画を観たらしい。

「あたしの好みで選んだ服を

 喜んでくれて~、映画も面白くて~

 帰りにキスしちゃいました~」

留美の無邪気な笑顔は輝いていた。

「良かったねぇ!告白成功したんだぁ?」

「そうじゃなくて~、恵理子さんみたいに

 あたしからしました~!」

「宇佐見君の気持ちは?」

「分からないです~、また、固まってました。

 バイ~バイ!って言っても

 立ち尽くしてたから帰っちゃいました~」

薫子は、そう、と答えるのがやっとだった。


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