口説いてんの?
叩かれた凪斗は、前のめりになり
牌が散らばってしまった。
「馬鹿かぁお前は?
凪斗はそれが優しさだと思ってんのか?
違うぞぉ、お前はただの優柔不断男だ!」
「真太郎・・・凪斗は真面目だから
言えなかったんだよ」
「俺は、真面目じゃない!
真太郎が言ったように優柔不断なんだ!
好きでもない人とキスしたんだからぁ!
それに・・・」
凪斗が口篭ったので
薫子は彼の隣に座り優しく訊いた。
「それに?」
「抱きつかれて・・・」
三人の目に驚きの色が浮かんだ。
「それで?」
「車から逃げるように降りた」
彼は身体を震わせ背中を丸めた。
「宇佐見君、変に気を使って恵理子さんの
我が儘に付き合う必要はないんだよ。
苦手を克服しようと思ってしたのも
分かるけど・・・
そんな事してたらみんな傷付く。
留美も可哀相だよ」