口説いてんの?

薫子は全身に鳥肌が広がった。

俊也と真太郎は神妙な顔つきで

言葉を飲み込んでいる。

薫子は、恵理子さんの隣に座り

背中を撫でた。

「宇佐見君から事情は訊きました。

 正直、彼も困ってます。

 恵理子さんの立場や仕事のこともあるので

 断れなかったと言ってます。

 だから、こんな事は、もう・・・」

恵理子さんはしゃくり上げながら答えた。

「旦那とはすれ違いで

 ゆっくり話もしないし

 夫婦の関係も長いことなくて

 久しぶりのキスだったの。

 それが、年下の凪斗君だったので

 酔って覚えてなくても嬉しくて・・・

 私も、まだ女として見てもらえてるんだ

 と思うと自信が持てた。

 凪斗君に言われたことを思い出し

 彼も、もしかして・・・なんて思い始めて

 ブレーキが効かなくなってしまって」


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