口説いてんの?

恵理子さんは虚ろな目で凪斗を眺め

顔を歪めた。

「恵理子さんには家庭があるんですよ。

 もし、宇佐見君と何かあったら

 帰る場所がなくなってしまう。

 それを望んでる訳じゃないでしょ?」

恵理子さんは床に目線を落とした。

重たい空気の狭間で、凪斗は唇を噛みしめ

俊也と真太郎は天を仰いでいた。

「宇佐見君が相手じゃあ

 恵理子さんも物足りなくなると思います。

 こんな優柔不断男は忘れましょう!」

薫子が勤めて明るく言うと

恵理子さんは暫く考え、涙を拭った。

「そうだね!

 薫ちゃんごめんね、止めてくれなかったら

 本当のストーカーになってた。

 私には大事な家族がいるから

 こんな馬鹿なことしてられないよね?」

「そう思います!」

薫子は、心を鬼にして言い切ったけど

恵理子さんの気持ちが分かるだけに

後味は悪かった。


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