口説いてんの?

その瞬間、部屋に緊張感が走ったけど

俊也がすかさずツッコミを入れる。

「馬ー鹿!二人が本気にするだろぉ?」

薫子は俊也の隣に座り

意味ありげに顔を寄せた。

「本気だって言ったら?」

「そんな訳ないだろ?」

「俊也の眉が動いてたよ?

 一瞬ドキッ!としたぁ?」

「動いてない!馬鹿らしい!麻雀再開だ!」

「何、動揺してんのー?」

「煩い!早く始めるぞ!」

「あんまりからかうと

 マジで怒られそうだからやめとこ。

 二人とも始めるよ!」

二人の掛け合いを、凪斗と真太郎は

口をポカンと開けて見ているだけだった。

だけど、この出来事がきっかけで

心が波立った人がいた。

誰も、そして本人も気付かないような

小さな小さな揺れだった。


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