口説いてんの?
薫子は、凪斗の前に立ち
「ごめんね、騒がしくて。私、安達薫子。
薫で良いから」
そう言って、右手を差し出した。
彼は、その右手を見つめながら
小さな震える声で返事をした。
「宇佐見凪斗です。宜しくお願いします」
そっと差し出した手は、汗で湿っていた。
「宇佐見君、大丈夫?」
「お前に圧倒されてんだよ!
いきなり大きな声出すから!
真面目な若者をイジメるなよ!」
「はい。ごめんなさい」
俊也は凪斗の肩を叩いた。
「悪かったな。
煩いけど良いヤツだから。
仕事もちゃんと教えてくれるし。
女の相談にも乗ってくれるぞぉ!
そういうの大好きだから、アハハ!」
「そうそう。大好きだから、アハハ!」
「はい」
凪斗は二人の顔を見比べながら
お似合いのカップルだと思った。