口説いてんの?

「留美とその彼女似てるな・・・」

俊也は一人呟いた。

凪斗は、クルリと瞳を動かし天井を見た。

「俺、真面目なんかじゃないです。

 ただ、優柔不断で臆病なだけです」

と言って、不可解な笑みを滲ませた。

私には彼の笑顔が悲しそうに見えた。

好きでもない人に抱かれる留美の気持ちも

分からないけど、好きでもない人を抱く

彼らの気持ちも分からない。

だけど、凪斗は傷付いている。

恵理子さんや留美を傷付けたことに

彼は傷付いていると思った。

人は自分の感情を

相手に押し付けてしまう。

その時は、相手の気持ちを考える

余裕はない。

身体を重ねることで安心感を求め

必要とされていることに満足する。

だけど、そこに愛がなければ

ただの行為でしかなく、なんの意味もない。


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