口説いてんの?

「ハハ!笑えるな?

 まぁ、また泣いてしがみついて来たら

 俺が抱いてやるよ!」

俊也は鼻で息を飛ばし、片頬を上げ

凄い悪い顔になっていた。

本気でそんな事を思っている訳では

ないだろうけど、薫子は面白くなかった。

「俊也、汚れてるよ。

 そんな考えやめた方が良いよ」

俊也は、面食らったような声を出した。

「どうしたんだよぉ?

 薫子のそんな顔見たことないぞぉ?」

どんな顔をしているんだろう。

不安に満ちた顔だろうか。

それとも、不機嫌な顔なんだろうか。

薫子は、頬を押えて瞬きをした。

「薫さん、やっぱり?」

真太郎は、誰に言ったでもなく呟いた。

「違う。留美も可哀相だなと思って・・・

 そうやって身体を重ねた後に

 何が残るのかなぁと思って・・・

 私には理解出来ない。

 私は、好きな人とだけ、そうなりたい!」

薫子は、いつの間にか声を張り上げていた。


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