口説いてんの?
外でクラクションの音がしたので
窓から覗くと俊也の車が止まっていた。
本当に来たんだぁ。
薫子は、急いで階段を駆け下り
玄関へ向った。
ドアを開けると
俊也も玄関へ歩いてくる途中だった。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。行くか」
やっぱり何か変だ。
疲れている様子でもないのに
話が弾まない。
軽く食べたい、と言うとお蕎麦屋さんに
連れて来てくれた。
「蕎麦屋なのに、いなりが美味いんだぁ」
「そうなんだぁ。
ねぇ、何かあった?恋の悩みとか?」
「あぁ、まぁ、そんなトコだ」
相談にのるよ、と言っても
曖昧な返事しか返ってこなかったので
会話が途切れてしまった。