口説いてんの?
会計は俺がすると言い張り、奢ってくれた。
車に乗り込み、何処か行くの?と訊いても
いや、の一言で終わってしまった。
薫子の家の近くに着くと
俊也は車を止めてタバコに火を点けた。
「寄ってく?」
「いや」
「今日さぁ、いや
しか訊いてない気がするけど?
相談あるならさぁ・・・」
「薫子・・・」
不意に抱きしめられた。
俊也に抱きしめられるのは
初めてじゃないけど、やはり何かが違う。
「変だよ?」
俊也は身体を離し
フロントガラスに目を向けた。
もしかして・・・
薫子が横顔を見つめると
俊也は何かを言おうとして唇を開いた。