口説いてんの?
一通りの説明を終えると
凪斗は意を決したように口を開いた。
「あの~、薫さんはレジですか?」
「うん。焼きは俊也がいるからね」
「じゃあ、俺もレジで良いですか?」
「良いよ!
人前に出るの苦手なんだから克服しよう!」
「はい!」
元気よく答えたけど
彼の目が赤いので、顔を覗き込むと
目を見開き硬直していた。
「目赤いよ?」
彼は、顔まで真っ赤になり目を覆った。
「私、泣かしちゃったぁ?」
「すいません。トイレは?」
彼は、パイプ椅子を蹴飛ばしながら
事務所から出て行った。
一人残された薫子は
彼との会話を思い返した。
何か気に障るような事言ったかなぁ。
自信がないのかなぁ。
無理に克服させようとしたのが
いけなかったのかなぁ。