口説いてんの?

一通りの説明を終えると

凪斗は意を決したように口を開いた。

「あの~、薫さんはレジですか?」

「うん。焼きは俊也がいるからね」

「じゃあ、俺もレジで良いですか?」

「良いよ!

人前に出るの苦手なんだから克服しよう!」

「はい!」

元気よく答えたけど

彼の目が赤いので、顔を覗き込むと

目を見開き硬直していた。

「目赤いよ?」

彼は、顔まで真っ赤になり目を覆った。

「私、泣かしちゃったぁ?」

「すいません。トイレは?」

彼は、パイプ椅子を蹴飛ばしながら

事務所から出て行った。

一人残された薫子は

彼との会話を思い返した。

何か気に障るような事言ったかなぁ。

自信がないのかなぁ。

無理に克服させようとしたのが

いけなかったのかなぁ。


< 9 / 225 >

この作品をシェア

pagetop