煮干し女
「…健ちゃん」
あたしが鏡越しに話し掛けると、なんだよ、と健ちゃんがヒョッコリ鏡に映った。
「これ、あたしホントに貰っちゃって良いわけ?後で返せって言われても返さないよ?」
「お前ばか?あげたもん返せなんて言わねーよ。」
クククと噛み笑いしながら答える健ちゃん。
「…でもあんた。こんなん買えるような給料じゃないでしょ…?」
だって、まだ働いてた時におんぼろアパートに住んでるって聞いたし。
「あれ?お前知らなかったっけ?」
「??なにがよ?」
「俺、家の跡継いだんだよ。」
家??
「あんたん家何かやってたっけ?」
確かお母さんは保険会社で働いてて、お父さんは健ちゃんが小さいうちに亡くなってたはず。
「ほら、最近白い犬が喋るコマーシャルあんだろ?」
「あぁ、有名なやつ…TCBのでしょ?」
「そうそう。そこのグループの名前知ってる?」
あ"ー何だったけ…秘書の時はそういうのに詳しく成らざるを得なかっただけに、思い出せないのに腹が立つ。