煮干し女

「…健ちゃん」

あたしが鏡越しに話し掛けると、なんだよ、と健ちゃんがヒョッコリ鏡に映った。

「これ、あたしホントに貰っちゃって良いわけ?後で返せって言われても返さないよ?」
「お前ばか?あげたもん返せなんて言わねーよ。」


クククと噛み笑いしながら答える健ちゃん。

「…でもあんた。こんなん買えるような給料じゃないでしょ…?」
だって、まだ働いてた時におんぼろアパートに住んでるって聞いたし。

「あれ?お前知らなかったっけ?」

「??なにがよ?」

「俺、家の跡継いだんだよ。」




家??




「あんたん家何かやってたっけ?」

確かお母さんは保険会社で働いてて、お父さんは健ちゃんが小さいうちに亡くなってたはず。


「ほら、最近白い犬が喋るコマーシャルあんだろ?」

「あぁ、有名なやつ…TCBのでしょ?」

「そうそう。そこのグループの名前知ってる?」


あ"ー何だったけ…秘書の時はそういうのに詳しく成らざるを得なかっただけに、思い出せないのに腹が立つ。



< 11 / 12 >

この作品をシェア

pagetop