銀白虎





あたしはぽけっとしたまま、入口付近に立っていたら。



教室の奥に……台本が落ちていた。



きっと、神崎くんの忘れ物だ…。



あれを見ながら、さっきまで練習していたから。




近づいていって、それを拾いあげる。



開いていたページには、若干贔屓の混ざった注意を受けていたところが、ちゃんと書いてあった。


もうちょい高い声、とか。




……きっと彼は、陰ながら努力する人だ。だから、気付かれにくいけど…。


嫌だ嫌だと言いながら、ちゃんと頑張る人だ。



不器用だけど、真っ直ぐで。





あたしは――…この人を、好きになるのだろうか。




わからないけど…それでも、ちゃんと考えてみようと思った。





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