銀白虎





もはや呆れを通り過ぎる勢いで、軽くエセ王子に同情を覚えた。




そして、そこはなぜかキスマークがべったりたくさんついていて。

一種の、写真王子にキス出来るスペースとして、名所化しつつあった。




うん。見なかった。私はなにもミテイナイ。

呪文のように繰り返して、教室へとまた足を踏み入れた。




「ああ!!結城さん!さっき現れたと思ったらすぐ消えちゃって!どこいってたのよ!!」


…いや、ただ廊下にいただけですけど。

はい。すいません、存在感なくて。



「司会がいなきゃ、始まんないでしょう!?」


また怒られたので、申し訳ありませぬ、と謝ると。

「いいから早く!!」とズルズルと腕を引っ張られて、教室の隅の方へと連れられていく。


あれ〜なんて効果音が付きそうな程、軽々とひきづられた。



そして、はい、と渡された台本。なんとこれを手にしたのは、初めてだ。キャスト以外、貰えないので。



ぱらぱらとめくれば、文字がびしーっと。誰がどこを読むか書いてあった。


「結城さんは赤丸ついてるところね!」


そう言われ、見てみれば赤丸がついたところが多数。


ご、ご丁寧にどうも。



果たしてこれを噛まずに読めるのか…疑問だ。





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