銀白虎
Ⅵ
よわむし
40席、用意された椅子はもう埋まっていた。他の人は立つようになるのだが、そんなこと気にもせず、さっきから人がわらわらと駆け込んでくる。
立っている人の方が多いんじゃないか、それほどこの広くもない狭い教室には、人が溢れかえっている。
うわー、緊張する!
あたしが客席から見えない場所からちょこっと覗いていたら。
つんつん、と突かれて。
振り返ると亜美がいた。
「うはー!人多いっ。緊張するね〜」
亜美は、すでに白雪姫の衣裳になっていた。
…やっぱり、似合ってる。素直で可愛らしい亜美に、ぴったりだよ。
「…あたしね、言おうと思うんだ。」
「え…?」
「白雪姫になれたから、今日までさ、文化祭準備の時、ずーっと近くに入れて、すごい嬉しかった……夢みたいでね、やっぱり好きだなぁって思ったよ」
そう思い出すようにあたしに話す亜美の顔は、本当に恋する女の子だった。