銀白虎
目を開くと、視界には……階段を上まで上りきった亜美が映った。
確か、後ろからついていたあたしは途中の階段で踏み外し、背中から落ちた。
亜美は驚いたような顔をしている。
そこは、あたしが突然落ちたんだし分かる気がする…。
…でも、なんで顔を真っ赤にする?
しかも荷物なんか下に落として、頬を押さえながらうっとりしているようにも見える…。
『大丈夫?』
ふと、上から降って来たのは、女子の声ではないだろうと思える低すぎず低い声。
ビクッと肩を震わせ、顔を上げた。
……………蓮見、冬弥…?
綺麗な銀髪の整いすぎる顔が、驚くほど近くにあった。
『確か…結城さんだよね?どこか痛いところある?』
びっくりし固まっていたあたしは、コクリとだけ頭を動かす。
『良かった』
そうすると、蓮見くんの腕から解放された。
ふぅ…と息を吐き、亜美の顔が赤い正体はこれか、と納得した。
面倒臭いことになった。
次の理科の実験の班は亜美と同じなので、更に…だ。
はぁ…。
羨ましがる亜美が目に浮かぶ。