銀白虎
そうだよね、もう夕方だし、このままじゃ家に帰れないよね…。
あたしは虎丸ちゃんを持ち上げ、しっかり抱くと、おにーさんの腕に渡そうとした。
…だけど。
「くぅ~ん…」
切なげにあたしを見つめるその瞳は、まるで離れたくないよぉと言われているみたいで……。
どうしても、おにーさんに渡すことができなかった。
「こりゃこまったなァ」
うーん、と悩ましげに顎に手をやるおにーさん。
「あ、てかやべっ!このままじゃ若に怒られちまう…!」
ケータイを見たかと思ったら、慌てだす。
それから、あー、とか、うーとか、唸りだしてしまった。
どうやら、精神的にかなり追い詰められているらしい…。