銀白虎
Ⅹ
苦しくて
バッ
「…つか、」
呆気なく消えていく温もり。
さっきは勝手に引き寄せたくせのに、今度はきまぐれに突き放すんだ…。
蓮見くんはいつも突然だ。前触れもなく。
ずるい。今までのあたしなら、文句のひとつも言ってやっていたのに…。
今は、言う気にもなれない……。
「…やっぱ、お前の顔見てると苛々する。」
は!?
人の顔を見つめてくると思ったら、なによそれ……。
苛々するやつをあんたは抱きしめんのかいっ!
って、心の中で悪態をつくけど…。
やっぱりあたしって、嫌われてるのかな…?
ズキッと、胸が痛む…。
なんだ…あたし。
こんなの、あたしらしくない。きもちわるい。
「…すいませんね、苛々させて。」
たぶんこれは、あたしなりのギリギリの意地なんだろう。