銀白虎
『飼い主はいるのかなあ。わんちゃん、飼い主いるの?』
首輪は一応つけている。
この近くなのかな?
どうしよう。
このままほっとくわけにも行かないし…。
仔犬の頭を撫でながら考えていたら、
「ワンワン!」
と吠えだし、仔犬は走り出す。
え?
あ、もしかしてお家に帰るのかな…?
じゃあもう平気かな、そう思って立ち上がったら、「ワンワン!」と聞こえた。
なんとわんちゃんが一端足を止めて、こっちを振り返っていた。
えっ?
もしかしてついてこいってこと?
そんなこと、あるわけないか。
非現実的な考えを頭から消し去る。
だけど…
わんちゃんはまだあたしの方を見て、クゥーンとしている。
この子、本当に頭がいいな。
仔犬がついてこいなんて、ありえないかもしれない。
でもなんだか…今までにないくらい、ワクワクしてきた。
あたしは走り出す。
そしたら仔犬もまた、走り出した。