銀白虎
授業中なので、とても静かな廊下。
自分の自然と早くなる足音がよく響く。
いつから、こんなに好きになっていたのだろう……?
どうして、こんなに、大きくなってしまったのだろう……。
彼は、ヤクザの若頭、なのに……
それを知っていたのに…。
なんで……。
記憶の中にこべりついて離れない。
それだけが鮮明に、色褪せることなく、あたしにあの時を思い出させる……。
居心地の悪い空間、嗅ぎ慣れない匂い、厳粛な雰囲気。
なにもわからなく、わけもわからなくて、ただぼーっと立ち尽くすことしか出来なかった…。
『利春さん、借金があったらしいわ』
『まあ、じゃあ娘さんには?』
『知らせてなかったみたいよ』
『そりゃそうよね、言えないわよねぇ』
そして、どこからともなく聞こえてきた、
名前も知らない親せきのおばさん達の言葉…。