銀白虎




驚きすぎて、スプーンを持ったまま、ぽかーんとしてしまった。




「…喰わねぇのか?」


「え?あっ、ううん……食べるよ…。…ただ、びっくりしちゃって」



「…びっくり?」



蓮見くんは、普通に食べている。周りのことなんて気にもせず、自分のペースで。

きっと、いつものことだからこの光景にも慣れているのだろう。



「…すごいね、みんなの食欲。みるみるうちに、無くなってく」


「…ああ。いわば戦場だからな。早く食べなきゃ、他に取られてなくなっちまうから必死なんだよ」




なんてサバイバルな食事の時間だろう…。


あんなに早く食べて、味とか分かるのかな?



おいしいって、大事なことなのに…。



ズキンッ、


「…痛っ……」



何か、思い出しそう……


大切な、大切な、何か。



それからずっと気分は優れないまま。




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