銀白虎
「…おはようございます、クラさん」
「昨日はよく眠れましたか?そろそろ起きた方がいいって、若が言ってます」
「あ…はいっ」
「それじゃ、支度が終わったら大広間…えっと、ここをまっすぐ行って右を曲がって左側の部屋っすから、そこに来てくださいっ」
と言って、長い廊下の向こうへ消えて行った。
あたしは数秒間、呆然としていた。
あんなにあっさり、ここにいるのが普通なような態度にびっくりしたのだ。
昨日の今日なのに…。
あ、ぼけっとしてる場合じゃなかった。
部屋には有り難いことに、お風呂もトイレもついている。
そこを借りて、制服に――――と思ったけど、
制服は“あの一件”で汚れているはず。
アキオ――――その名前を思い出すと、まだ、色んな感情が一気に生まれる。
はあ。洗濯するのを忘れてた…。