銀白虎
郷に入っては郷に従え
それからタケさんは、あたしの家―――今日からはもう、そうではないけれど。
その近くで下ろしてくれた。
あたしの家はアパートだ。
綺麗とは言えないが、ボロくもない。普通に住むには充分な場所だ。
カンカンカン、と。
この音を鳴らすことも当分ない。
あ、そうだ。大家さんに挨拶してかないと…。
部屋の鍵を開け中に入ると、必要なものだけをテキパキと詰めていく。
出来上がった荷物は、2泊3日くらいの小旅行鞄位の荷物ひとつだけ。
そして、最後に……
お父さんお母さんあたし、
3人で仲良く映った写真、の入った写真立てを持つ。
この中の人たちは、こんなにも幸せそうに笑っているのに……。
その写真立てを、胸にぎゅっと抱き締めた。
そして、それを一番上に丁寧に置いた。
「…あれ、それだけでいーの?」
「はい」
あたしには、これだけで充分だ。