銀白虎







――――けれど、擦れ違った時、竜くんの頭をがしっと掴んだ。


「…いっ!」


そんな声をシカトして、

いつの間に取ったのか、あたしが持っていたビニール袋を抱え、玄関へと消えていった。



……なんていうか、その一連の行動がスマートで。大人だなぁ、とか。やっぱり素敵だなぁ、とか思っていたんだけど。




「っ!遠山のやつ……、」


その声に呆然と眺めていたのをやめ、振り返ると。

そこには、ふてくされたように頭を擦る竜くん。



結構力を入れられたのかもしれない。痛そうだ。




「…大丈夫?」


「あ?…関係ねぇだろっ。お前まだいたのかよ」




きっと、こんな態度で返してくるんだろうと予想はしていたけど。

まったくその通りだと、なんだか可笑しい。




「―――竜くんもね。いつまでここにいるつもりなの?」


「はぁ?別にここに居たくている訳じゃねぇし!!」



「なら、一緒に中に入ろうよ。寒いでしょ?」


「絶対やだ。」



うーん、なかなか手強い。

即答かぁ。




でも、悪い子じゃないと思う。


遠山さんに悪態をつきながらも、信頼しているのが伝わったから。






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