銀白虎
「じゃあ、先に中入ってるね?」
その問い掛けに、もちろん返事はなかった。
それも仕方ない。竜くんに、嫌われているみたいだし。
なんと無く、理由はわかる。突然現れた居候を受け入れるなんて、無理に決まってる。
彼ら――森さん達が、特殊だっただけ。
それでいい。誰でもいい、あたしを許さないで欲しいんだ。優しすぎる人たちに触れていたら、あたしは全て忘れて―――幸せに浸ってしまいそうだから。
「…、若っ!」
その弾んだ声に、ふと振り返れば…
そこには蓮見くんと、さっきまでとは別人のような顔をした、竜くん。
…ああ、やっぱり悪い子じゃない。
蓮見くん――――若へと向ける絶対的な信頼、尊敬の眼差し。それを惜し気もなく、晒していた。
蓮見くんを、待っていたのか…。
まるで忠犬ハチ公のようだ。
…なんだか、安心した。
「くぅ~ん」
いつの間にか、足元には、虎丸ちゃん。
抱き上げれば、真ん丸いおめめを細めてすり寄ってくる。
「お出迎えにきてくれたの?ありがとう。 ただいま」
おかえり、とでもいうようにわんわん!と鳴く。頭を撫でたら、と嬉しそうにしていた。