銀白虎
「結城さーん!」
声のする方を辿れば、角からモヒカン―――クラさんが顔を出す。そういえば、この頭毎日いつセットしているんだろう。
「いたいた!!おっ、虎丸もいるじゃねぇか!」
「わう」と短く唸って、まるで「まぁね」と返事をしたみたいだ。
「結城さん、遠山先輩が呼んでましたよ。今日は夕飯当番に立候補したそうで。楽しみにしてまッス!」
にかっと、歯が出て。つぶらな瞳が糸のように細くなる。…やっぱり、笑うと可愛いなこの人。
「ありがとうございます。精一杯頑張りますね」
「はい!……にしても。
ほんとうに、虎丸は結城さんが好きみたいですねぇ」
そう言われると、ちょっぴり照れる。けどそうなら嬉しい。
虎丸ちゃんもそれに同意するように、「わんわん!」と鳴いた。
可愛いので、よしよしとまた頭を撫でる。
「虎丸と若は趣味が似てるのかもなァ。ウチのやつらも、結城さんのこと一目置いてますよ!」
「…え?」
「あの若を落として、虎丸をなつかせるてるんですから…、すごいっス!」
クラさんは目をキラキラさせながら、尊敬の眼差しを向けてくる。
いやいや、ちょっと待って!なにかおかしいこと言わなかったかこの人…!?
「あ、あのクラさん…?」
「はい!」
「…若のことを落とすとは…?」
「若がここに女を連れてきたのは、初めてっすからっ!…それほど、守りたかったんでしょうね」
それは、ない。絶対に。蓮見くんは、きっとこんなあたしが可哀想になっただけなんだと思う。ぼろぼろの捨て猫を拾うような、そんな感じ。