銀白虎
「ウオオオオオオ――――!」
長い長いテーブルに、食事を並べれば。
大きな、雄叫びが上がった。(は、恥ずかしい…)
「…あ、あの地味なもので申し訳ありませんが良かったらど―――」
うぞ。と、言い終わる前に、いつもの戦争が始まった。しかも今日は一段とすごい。
そろそろ見慣れてきた、と思っていたがまだまだだった…。
勢いに唖然としていれば、隣でタケさんが笑いだして。
「…はは、ウチの奴等、気合い入ってんなー」
た、たしかに…。すごいな男の人って。
「俺もなくなる前に取んなきゃー」
相変わらず、この人ゆるいな。
しかし二面性があることは知っている。
(でも、)
自分が作ったものを食べてもらうのって、むず痒くて、でも嬉しい。
「結城さん!これウマイっす!!」
誰か一人が言うと、あちらこちらから、
「まぢ最高!!」
「こう言う味が食べたかったんだよなぁ」
「家庭の味、ってやつだろ!?」
「ほんと美味しいです!」
そんな声が上がって、
なんだか、言いようもなく、じわじわと何かがせりあがってくる。
お母さんとお父さんには、食べさせてあげられなかったから。
(思えば、自分以外の誰かに作ったのって初めてかもしれない)
「飛鳥ちゃん意外と料理上手なんだね~、俺の嫁になるぅ?」
「なりません。」
きっぱりいうと、どっと笑いが起こった。
こっそり、蓮見くんを盗み見みれば、いつも通りただただ自分のペースで食べるだけ。何か言うこともない。
だけど、お茶碗もお皿の中身も、終わりに近付いていたから……ホッと、安心した。不味くはないみたい。良かった…。
――――ただひとつ、
…やっぱり、大勢集まったこの食卓に、竜くんの姿はなかった。