銀白虎
「…あいつのことだから、きっと食べないぞ」
「それなら、それでいい」
元々、自己満なんだし。
そりゃ、ちょっとは悲しいけど。
「…そうか」
蓮見くんは視線を外すと、何かを考えているようで、遠くをぼんやり見詰めている。
そんなふとした顔が、綺麗で………ずるい、と思った。
「…あいつがここに来たのは3年前くらいだ」
ポツリ、決意したように彼は目線を外したまま、話し出す。
「あんときは、今以上だったかもな。俺としかまともに会話しなかったし。ここに慣れるのにも、結構時間掛かった。
―――だからまあ、長期戦覚悟で頑張ることだな」
気にするな、と遠回しに言ってくれてるのだろうか。
「多分、お前にはいろいろ暴言を吐くと思うが…」
そう呟いた蓮見くんに、思わず小さな笑いが漏れた。
「…なんだよ?」
「…いや、どっかの誰かさんが、一番あたしに暴言を吐いてきたのに、と思って」
そう言ったら、睨まれた。ほんとうのことなのに!
「で、でも蓮見くんも女嫌いだもんね!仕方ない仕方ない!!」
恐いからとりあえずご機嫌を取ろうと思ったら、「は?」と更に低い声。
な、なぜ!
「だって、言ってたじゃんっ!女なんか嫌いだって…」
「…あれは、うぜぇ女が嫌いって意味だよ」
………あまり違いがわからない。
「なんだ?」
「…いえ、なんでも」
じゃあ、
あたしは“うぜぇ女”になってないかな……。
そんなこと聞くまでもなく、居候させてもらってる時点で、迷惑な女だろうけど。