銀白虎
「ああ、うん。今日はごはん余ってたから」
「ふ~ん。じゃあさ、このパンとそれ、交換してくんない?」
「え!?」
「なんかそれ見てたら、すげー白飯が食いたくなった…。あ、でも結城が嫌ならいいんだけど」
「いや、別に嫌ではないんだけど…」
でも、ただのおにぎりだけだよ?そう言おうとしたのに、
それより先に、まぢ!?なんて声が聞こえたと思ったら、いつのまにか手元にいたおにぎりたちが消えていた。な、なんて早業!
「え!?や、でも!おかずなんてないし、おにぎりだけだよ!?」
「全然平気。むしろおにぎり大好きだし!」
そう言っている神崎くんは、すでに半分以上食べていた。
「じゃ、じゃあ…その分のお金払うよ!」
「いやいいって。俺もそんな食いきれねぇし」
じゃあ、なんでこんなに買ったの?
神崎くんの言葉に、そんな疑問が浮き上がって。
「………気になる?」
目は口ほどにものを言う。だったのだろう。
もう2個目も半分なくなっているおにぎりから視線を外して、あたしを見つめてくる。
「…うん。どうして?」
神崎くんが聞いてきたから、素直に頷いて聞き返したのに。
彼はまた視線をおにぎりに戻すと、食べるのを再開して。
「……結城には教えない。」
そう言って、最後の一口を口の中に放り込んだ。