銀白虎
負けないから
“美和さん”という名前が、どっかで聞いたことあるという記憶は、やはり正しかった。
それが分かったのは、昼休み終了5分前のことだ。
「このクラスで、王子からパンを受け取った人は、直ちに渡すこと!」
………ああ、忘れていた。それはもう完全に。
ついにあたしの脳は、嫌なことはすぐ忘れるという素晴らしい作りになったらしい。
厳しく鋭い瞳をする彼女。
美人なのに、もったいないな、とやっぱり思う。
蓮見冬弥ファンクラブ会長だ。
そして周りには、副会長、愛梨先輩もいた。
そしてタイミングが良いのか悪いのか。
はた、と目があってしまった。
そう言えば、彼女たちと会うのは、あれ以来。
鋭い瞳があたしを睨んで、あからさまに“敵”を見る目だ。