銀白虎
「……結城飛鳥さん、今ちょっといいかしら?」
そんな声が聞こえたと思ったら、“美和先輩”が目の前に立っていた。
い、いつの間に…。
「…はい」
「じゃあ、ちょっと着いてきてもらえる?」
有無を言わせないような威圧感。
「は、」
「何の用ですか?」
逆らえなくて、頷こうとしたあたしの言葉に被せるようにしてきたのは、神崎くん。
「ここじゃ困るような話ですか?そうでなければ、ここでお願いします」
普段の彼からは見られないような、淡々とした喋り口調。
あの美和先輩に、臆することもなくこんなこと言えちゃうなんて、神崎くんってほんと強者だ………。
「…またあなたなの?あなたには関係ないことだと思うんだけど」
「確かにそうかもしれませんけど。ただ、後輩をいびるようなことをしている先輩たちが見てられなくて」
「あら。あなたは正義のヒーローにでもなったつもりなのかしら?そういうのを、偽善者って言うのよ?」
にっこり、笑った顔は勝ち誇ったようで。そんな顔も綺麗で、素敵な人。