銀白虎
「…………河南ちゃん!」
なぜだか、廊下に出ていく彼女を引き留めて。
「なに?今から神崎先輩探さなきゃいけないんだけど」
いつもの仏頂面に、どこか、ホッとした。
………変な話だけど。
ゆらりゆらり、ツインテールが揺れていた。
「……今日、可愛いね」
「は?あたしが可愛いのはいつものことだから」
うん、知ってる。
神崎くんの為に、毎日頑張ってるんだもんね。
………河南ちゃんは、すっごくすっごく可愛いよ。
ちゃんと、“努力”をしてるから。
「……………しょうがないって、分かってる」
ぽつり、呟いた言葉は、口調のわりに今にも消えそうで頼りなくて。
全然、いつもの河南ちゃんらしくなくて。
なんで、苦しいばっかりなのに、
“好き”を、捨てることは出来ないんだろう?
「…………でも、負けないから」
その声は、まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
彼女は、勢いよく走り出していった。
あんなに小さな身体で。
好きな人を、追い掛けて。