銀白虎
秘密の場所
「…飛鳥?」
「…ん?」
「帰らなくていいの?」
「え?」
――――気づいたら、放課後になっていて。
「今日は、バイトないの?」
蓮見くん家に居候するようになってからは、亜美に帰りに誘われた時の為に、バイトを始めたことにしている。
「あー、」
うん、とはもちろん言えなくて。
でもある、ともなんだか言いにくくて。
「…今日は、ちょっと遅いの」
「そっか」
亜美は何にも疑うことなく、あたしの答えに微笑む。
…ウソつきなあたし。 またチクリ、と胸が痛んだ。
「…なんか昼休みから元気ないね?美和先輩たちのこと、気にしてるの?」
そんな心配そうな顔される資格ないのに。
「きっと大丈夫だよ!なんだかんだ神崎頼りになるし!……それに、いざとなったら、王子が助けてくれるよ!」
曖昧に笑えば、必死に励ましてくれる亜美に、うん、ありがとう。と言うことしかできないあたし。
でも、美和先輩のことじゃないんだ。
――――――負けないから。
あのなんとも言えない顔が、頭から離れない。
…たぶん、心の中では泣いていた。
「………きずつけた」