銀白虎








「…え?」





「…きっと飛鳥はさ、誰か泣いてる子がいたら、もらい泣きして自分まで泣いちゃうんだよ」





「…そんなことないよ?」



「これは例えだから。でも、誰かを傷つけちゃうのはしょうがないよ。だってみんな、矢印が違う方向を向いてるんだから」







「…矢印?」




「………神崎は、飛鳥が好きで。そんな神崎をあのこは好きで。それで飛鳥は――わからないけど、」










ゆっくり、あたしを見つめる瞳。



一瞬、ゆらりと揺れて……。






「…………けど、神崎の気持ちには答えられないんでしょ?」





ずしり、胸に鉛のようなものがのしかかる感覚がした。



胸が痛い、のとは違う。








< 468 / 589 >

この作品をシェア

pagetop