銀白虎
「…え?」
「…きっと飛鳥はさ、誰か泣いてる子がいたら、もらい泣きして自分まで泣いちゃうんだよ」
「…そんなことないよ?」
「これは例えだから。でも、誰かを傷つけちゃうのはしょうがないよ。だってみんな、矢印が違う方向を向いてるんだから」
「…矢印?」
「………神崎は、飛鳥が好きで。そんな神崎をあのこは好きで。それで飛鳥は――わからないけど、」
ゆっくり、あたしを見つめる瞳。
一瞬、ゆらりと揺れて……。
「…………けど、神崎の気持ちには答えられないんでしょ?」
ずしり、胸に鉛のようなものがのしかかる感覚がした。
胸が痛い、のとは違う。